ジャイヴにおけるクライング

 さてR&Bのパイオニアのレイ・チャールズが登場する前の1940年代のR&Bは、主にジャズマンが演っていた、ジャイヴ、別名ジャンプ・ブルースというジャンルでした。

 R&B(リズム&ブルース)というジャンル名は、1947年にビルボード誌のジェリー・ウェクスラーが提案しました。

 R&Bチャート自体は、1942年にビルボードのR&Bチャートの前身のハーレム・ヒット・パレードから始まりました。

 しかし、ジャイヴ、ジャンプ・ブルースのアーティストの曲が、あまりに陽気で明るい為に、後にジェリー・ウェクスラーがリズム&ゴスペルにするべきたったと言った程に、1940年代のR&Bは明るいのです。

 さて、まずはジャイヴの第一人者のルイ・ジョーダンです。聴いて解る様に明るいです。

 ルイ・ジョーダンは1939年にデビューしました。そしてアルト・サックス奏者でもあります。

 ルイ・ジョーダンは、この曲では、パワフルな声のネイゾルのクライングを使っていて、明るいトーンのクライングですが、暗めのトーンのクライングも得意としていました。

 確かに、ソウルミュージックのシャウトのパイオニアは、ベン・E・キングです。

 そして確かに、R&Bのウィスパーのパイオニアは、レイ・チャールズです。

 しかし、シャウトもウィスパーもルイ・ジョーダンの方が先に使っていたのです。

 それを言い始めたら、ジャズもR&Bの一種だという事になり、全ての発声法はジャズで使われていましたので、大変な事になります。

 当サイトでは、ジャイヴ、ジャンプ・ブルースはジャズの一種と定義しています。

 よって1949年にデビューし、1950年代から活躍したブルースから派生したレイ・チャールズのR&Bが、いわゆるR&Bであり、レイ・チャールズがR&Bのパイオニアであるという定義ですが、これは他の方も同じ様に考える人が多いでしょうし、むしろ一般的な定義だと思います。

 ジャイヴ、ジャンプ・ブルースは確かにR&Bと呼ばれていたましたが、サウンドも歌い方もジャズだからです。

 もしジャイヴ、ジャンプ・ブルースをR&Bだと定義したらスウィング・ジャズもR&Bという事になってしまいます。しかし、実際にビルボードのR&Bチャートにはスウィング・ジャズもランクインしていたのです。

 とは言え、もし「ジャイヴ、ジャンプ・ブルースがR&Bなのか?」と聞かれれば、「違う」と答えられます。

 しかし、もし「ジャイヴ、ジャンプ・ブルースがR&Bではないのか?」と聞かれれば、「R&Bだ」と答えるしかないという微妙なジャンルです。

 よって、いわゆるR&Bのルーツはブルースとゴスペルですが、ジャズもR&Bのルーツという事になります。

 ルイ・ジョーダンは南部のアーカンソー州産まれです。

 音源は1947年の曲です。


ルイ・ジョーダン

 そしてキャブ・キャロウェイです。

 キャブ・キャロウェイと言えば、ダンスも得意でシンガーというよりはエンターテイナーです。

 キャブ・キャロウェイこそ、ジャイヴの第一人者だと言う人もいるでしょう。それくらいに有名なエンターテイナーです。

 そしてキャブ・キャロウェイは1930年にデビューしています。つまりルイ・ジョーダンより先にデビューしていたのです。よってジャイヴ、ジャンプ・ブルースのパイオニアであると言えます。

 キャブ・キャロウェイは、この曲では、パワフルな声のネイゾルのクライングを使っていて、明るめトーンに聴こえますが、実際はやや暗めのトーンのクライングを使っています。

 明るい声に聴こえるのは、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスとクライングを組み合わせているからです。

 この曲では、トランペットを使って歌っていませんが、他の曲ではトランペットも使って歌い、いわゆるジャズシンガーの声と歌い方です。ルイ・ジョーダンの方がR&Bっぽい声と歌い方だと言えます。

 ここでのトランペットとはネイゾルの発声法の一種で、楽器のトランペットではありません。

 ルイ・ジョーダンにしても、キャブ・キャロウェイにしても、共通して言える事は、ジャズの全盛期にエンターテイメントを極めたエンターテイナーだという事です。

 そしてどちらも、音楽に合わせて喋る事も得意で、ラップのルーツに挙げられる事もありますが、ヒップホップのラップとは全く違う感じでした。

 キャブ・キャロウェイは北部のニューヨーク州産まれです。

 音源は1931年の大ヒット曲です。


キャブ・キャロウェイ

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