1960年代ソウルと1970年代ソウルのマウスレゾナンス

 毎回サザン・ソウルから始めるのもワンパターンですので、ノーザン・ソウルでマウスレゾナンスを得意とするシンガーから紹介します。

 さて、まず初めに紹介するのは、1962年に天才少年アーティストとして、北部のミシガン州デトロイトのモータウンからデビューした、スティーヴィー・ワンダーからです。

 1960年代、そして1980年代以降のスティーヴィー・ワンダーはポップなのですが、1970年代はニュー・ソウルに傾倒し、いわゆるポップな曲だけなく芸術的な曲を沢山リリースしていました。

 この曲は1970年代のスティーヴィー・ワンダーにしてはポップな曲ですが、名曲ですので選びました。

 しかしエレクトリックピアノをフィーチャーし、ニュー・ソウルのサウンドです。そして若干ボサノヴァ調のサウンドですので、フュージョンの影響を感じます。スティーヴィー・ワンダーは、ダニー・ハサウェイのサウンドから影響を受けていても、独自のサウンドを追求し、次々に新しいサウンドの曲をリリースしました。

 スティーヴィー・ワンダーは、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンス主体のシンガーです。時代に左右される事がなく、そのスタイルを貫いています。そしてマウスレゾナンス主体のシンガーは、若干、パワフルな声のネイゾルのクライングと組み合わせますので、スティーヴィー・ワンダーも同様です。

 スティーヴィー・ワンダーはこの曲に限らずに、パンチの効いた明るいトーンのマウスレゾナンスと、やや明るめのトーンのクライングを組み合わせています。クライングが明るすぎると、このハイトーンでも温かみもある声にはなりません。

 またスティーヴィー・ワンダーの英語の発音は特徴的で、発声法を真似ても声が似ないという場合は、英語の発音を真似ると少し近づきます。

 スティーヴィー・ワンダーは北部のミシガン州産まれです。

 音源は1972年の大ヒット曲です。


スティーヴィー・ワンダー

 次は同じくノーザン・ソウルの北部のミシガン州デトロイトのモータウンのマーヴィン・ゲイです。

 マーヴィン・ゲイはシャウターとしても知られていますが、どちらかと言うとマウスレゾナンス主体のシンガーです。

 この曲も1970年代の曲ですが、マーヴィン・ゲイもこの時期はニュー・ソウルに傾倒していました。

 ニュー・ソウルはラブソングだけでなく、社会的でメッセージ性の強い歌詞も歌う様になったという事が特徴ですが、この曲はベトナム戦争に対する反戦歌でした。

 この曲でマーヴィン・ゲイは、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスが主体ですので、若干、パワフルな声のネイゾルのクライングと組み合わせていますが、前半はむしろクライングの方が強く、クライングにマウスレゾナンスを若干加えたという感じです。しかし、後半に盛り上がっていくにつれて、徐々に明るいトーンのマウスレゾナンスの方が強調されていきます。

 特にサビの後の、スキャットでのハイトーンのマウスレゾナンスが凄いです。そして裏声、つまりファルセットに聞こえますが、前半はかなりファルセット寄りの、地声と裏声をミックスしたミックスボイスと、かなり明るいトーンのマウスレゾナンスを組み合わせています。後半は明るめのトーンのクライング主体で、最後のフレーズだけは、前半とほぼ一緒の組み合わせながらに、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスを加えています。

 マーヴィン・ゲイはワシントンD.C.産まれです。

 音源は1971年の曲です。


マーヴィン・ゲイ

 それでは、ここからはサザン・ソウルでマウスレゾナンスを得意とするシンガーの紹介です。

 まずは南部のテネシー州メンフィスのスタックス/ヴォルトのオーティス・レディングからです。

 オーティス・レディングは、ジェームス・ブラウンと並び、ソウルの王様として知られています。

 時代は遡り、1960年代の曲です。

 オーティス・レディングもマーヴィン・ゲイ同様にシャウターですが、マウスレゾナンスも得意としていました。

 オーティス・レディングは多くのサム・クックの曲をカバーし、サム・クックから影響を受けたというのも納得です。しかしサム・クックより大分ブルージーなマウスレゾナンスです。

 この曲でのオーティス・レディングは、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンス主体ですので、もちろん若干、パワフルな声のネイゾルのクライングと組み合わせていますが、クライングは本当に若干という感じです。

 ブルージーで、深みのあるソウルフルなマウスレゾナンスの見本的な歌声です。

 サザン・ソウルは、ディープ・ソウルとも呼ばれますが、これぞまさにディープと呼べる声と歌い方です。

 マウスレゾナンスにはクリアな声と、おじさんやおばさんの様なダミ声の2種類がありますので、オーティス・レディングの場合はダミ声ではありませんが、深みのあるマウスレゾナンスでの歌声ですので、おじさんの様な声のマウスレゾナンスを使っています。

 後半では得意の、がなり声のネイゾルのシャウトも使っていますが、全体的にマウスレゾナンス主体のブルージーな歌声での、サザン・ソウルらしい名歌唱です。

 オーティス・レディングは南部のミシシッピ州産まれです。

 音源は1965年の曲のライブバージョンです。


オーティス・レディング

 次もサザン・ソウルで、ソウルの女王ことアレサ・フランクリンです。

 アレサ・フランクリンはこの頃は、スタック/ヴォルトの発売元のアトランティック・レコードのシンガーでしたが、南部のテネシー州の南隣りで、主に同じく南部のアラバマ州のフェイム・スタジオでレコーディングをした事で、メンフィス・ソウルのシンガーとして知られています。そしてこの名曲はメンフィスでレコーディンされました。

 アレサ・フランクリは堂々とした歌い方で、どちらかと言えば、パワフルな声のネイゾルのクライング主体のシンガーです。

 しかし、サザン・ソウルらしくブルージーに聞こえます。それは、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを使っているからです。

 クライングはやや暗めですが、若干、明るい声に聞こえるのは、明るめのトーンのマウスレゾナンスを使っているからです。

 アレサ・フランクリンは南部のテネシー州メンフィスですが、北部のミシガン州デトロイト育ちです。

 音源は1967年の曲です。


アレサ・フランクリン

 最後はサザン・ソウルでも、南部のテネシー州メンフィスのハイ・レコードのメンフィスの貴公子ことアル・グリーンです。

 そして時代は、1970年代です。

 1970年代を代表するサザン・ソウルのシンガーを一人挙げろと言われたら、真っ先にこのアル・グリーンの名を挙げるという程、有名なシンガーです。

 この曲に限らずにアル・グリーンの曲を聴くと、ファルセットで歌っている様に聞こえますが、この声はファルセットではなく、明るいトーンのマウスレゾナンスを使っているのです。よってキンキンせずにブルージーで深みがある声質なのです。

 そして、地声と裏声をミックスしたミックスボイスは、かなり裏声寄り、つまりファルセット寄りです。

 つまりファルセット寄りのミックスボイスで歌っているから、ファルセットに聞こえるのです。

 そして、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを使う時は、若干、パワフルな声のネイゾルのクライングを組み合わせると、再三に渡り書いていますが、アル・グリーンはクライングとも組み合わせていますが、ファルセット寄りのミックスボイスとも組み合わせているのです。これは目新しい組み合わせだと思うかもしれませが、このページにマーヴィン・ゲイの同様の組み合わせの歌声の音源も貼っています。ファルセット寄りミックスボイスとハイトーンのマウスレゾナンス、クライングを組み合わせる際に、マーヴィン・ゲイとアル・グリーンの違うところは、アル・グリーンの方がネイゾルのクライングが強いという事です。

 しかし、こういう感じの歌声は1970年代に流行った歌唱法なのです。

 ルーツはジェームス・ブラウン、カーティス・メイフィールドの歌唱法にあります。

 そして全体的にクリアな声のマウスレゾナンスを使っていますが、マウスレゾナンスにはクリアな声と、おじさんやおばさんの様なダミ声の2種類があります。アル・グリーンは時々、おじさんの様なマウスレゾナンスのダミ声を使うのも特徴です。

 アル・グリーンは南部のアーカンソー州産まれです。

 音源は1974年の曲です。


アル・グリーン

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