ヒップホップ世代のR&Bシンガー達のクライング

 まずその名を挙げられのは、元祖ヒップホップ・ソウル、そしてヒップホップ・ソウルの女王、メアリー・J.ブライジです。

 ヒップホップ世代とは、主に1992年にヒップホップ・ソウルが誕生し、それ以降にデビューしたシンガーの事を指しますが、それ以前にデビューしていても、ヒップホップの要素が入った曲を歌っていたシンガーはヒップホップ世代ですので、例外的なシンガーもいます。

 という基準なのですが、その1992年に初めてヒップホップ・ソウルを歌ったのが、このメアリー・J.ブライジです。

 そして、この曲は1992年のデビュー曲です。この曲から長いヒップホップ・ソウルの歴史が始まったのです。

 メアリー・J.ブライジは、パワフルな声のネイゾルのクライング主体のシンガーです。ほぼクライングオンリーに近いです。

 しかし女性R&Bシンガーでクライングを使うシンガーは、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスと組み合わせる事が多いのですが、メアリー・J.ブライジも、若干、マウスレゾナンスと組み合わせています。

 メアリー・J.ブライジはヒップホップの生誕地、北部のニューヨークのサウス・ブロンクス産まれです。

 動画は1992年のデビュー曲です。


メアリー・J.ブライジ

 次はデビュー当時、ホイットニー・ヒューストンを超える本格派のR&Bシンガーとして期待された、デボラ・コックスです。

 知名度的に、ホイットニー・ヒューストンを超えたかどうかはともかく、期待通りの活躍をしました。

 この曲でデボラ・コックスは主に、パワフルな声のネイゾルのクライングと、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを組み合わせています。これはメアリー・J.ブライジも同様ですが、「何故クライング主体の女性R&Bシンガーはマウスレゾナンスと組み合わせるのか?」と聞かれたら、「その組み合わせの発声法を作ったのが、ソウルの女王のアレサ・フランクリンだ」と言えば納得がいくでしょう。

 これは伝統なのです。

 しかしながら文字通りに、パワフルな声のネイゾルのクライングです。

 話は戻り、圧倒的な歌唱力を誇るデボラ・コックスですが、この曲の大サビは鳥肌ものです。

 デボラ・コックスはカナダのオンタリオ州トロント産まれです。

 動画は1998年のヒット曲です。


デボラ・コックス

 さて、21世紀に入り、ニーヨです。

 ニーヨとクリス・ブラウンは同時期にデビューしましたし、どちらも似た様なハイトーンな歌声で、同じ発声法だと思われている人も多いかもしれませんが、実は全く違うのです。

 ニーヨは明るいトーンのクライングを使います。

 クリス・ブラウンは明るいトーンのマウスレゾナンスを使います。

 という様に、使う発声法の種類が違うのです。

 ニーヨはこの曲に限らず、パワフルな声のネイゾルのクライングを使っています。しかし、いわゆるパワフルな声ではありませんが、クライングはサックスやフルートの様なクリアな声も出せますので、そっちの方を使っています。

 とは言え、サックスの音にはパワーがあります。前出のピーボ・ブライソンの様にサックスの様にパワフルでクリアな歌声という訳ではありません。どちらかと言えばフルートの様な声だと言えます。

 クライングオンリーなのにパワフルではなく熱唱系でもないというニーヨの声と歌い方は、スタイリッシュで新しく、そしてその後に登場した男性R&Bシンガー達に多大な影響を与え、今では当たり前な歌声だと言える程に深く浸透したのです。

 ちなみに最近は、マーヴィン・ゲイみたいなマウスレゾナンスも使っています。

 ニーヨは南部のアーカンソー州産まれですが、ネバダ州ラスベガス育ちです。

 動画は2006年の大ヒット曲です。


ニーヨ

 2010年代にクライングが印象的だったR&Bシンガーは、トラップ・ソウルを作った、ブライソン・ティラーです。

 トラップとは、南部のジョージア州アトランタで誕生したヒップホップのサブジャンルの一つです。

 ブライソン・ティラーは、パワフルな声のネイゾルのクライング主体ですが、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスと組み合わせています。とは言え、マウスレゾナンスは結構強めです。 

 しかしブライソン・ティラーの歌声はパワフルではありません。

 泣き声自体はこもった声ですので、そのこもった声を使っています。

 この曲で、今のR&Bの主流のトラップ・ソウルが誕生しました。

 ブライソン・ティラーは北部のケンタッキー州の産まれです。ケンタッキー州は北部ですが、歴史的に定義が複雑な州です。

  動画は2015年のデビュー曲です。


ブライソン・ティラー

 最近のR&Bでクライングを得意としているシンガーには、このリゾが例に挙げられます。

 文字通り、パワフルな声のネイゾルのクライングです。

 そして、ちょっとかすれた声に聞こえるのは、ウィスパーではなく、シャウトと同じ原理の発声法のネイゾルのトランペットと組み合わせいるからです。

 リゾは太っている事を売りにしていますので、圧倒的な歌唱力を誇る実力派のR&Bシンガー/ラッパーなのですが、PVも歌い方もコメディ調の場合が多いです。しかしこの曲は、そこまでコメディ調ではありません。

 リゾは北部のミシガン州デトロイト産まれですが、10歳の時にテキサス州ヒューストンに移り住みました。

 動画は2019年のヒット曲です。


リゾ

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