女性ソウルシンガーのウィスパーボイスのパイオニア達
女性ソウルシンガーのウィスパーボイスのパイオニアと言えば、まず誰もがダイアナ・ロスだと思うと思います。
しかし、ダイアナ・ロスはスプリームスでデビューした当時はウィスパーは使っていませんでした。
ダイアナ・ロスのデビュー当時の発声法は、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスでした。
スプリームに在籍していた途中の時期から、徐々にウィスパーを使う様になったのです。
女性のソウルミュージックでウィスパーを本格的に取り入れたのは、イリノイ州シカゴ出身のR&Bトリオのエモーションズです。当時、エモーションズは南部のテネシー州メンフィスのスタックス/ヴォルトのヴォルトのアーティストでした。
それは1969年の事でした。
聴いて分かる様に、リードシンガーのシーラ・ハッチンソンは全体的にウィスパー主体で歌っています。
シーラ・ハッチンソンの声作りを解説すると、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスと、主にパワフルな声のネイゾルのクライングを組み合わせていますが、かなり明るいトーンのクライングを使っています。いわゆるパワフルな声ではありませんが、クライングはサックスやフルートの様なクリアな声も出せますので、そっちの方を使っています。ソプラノサックスの様な声だと言えます。そして可愛らしい声に聞こえるのは、更に、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスも組み合わせているからです。そして更に、シャウトも使ってますので、一聴するとポップな歌声で、いかにも黒人らしいという歌声ではないのですが、実は黒人特有の発声法の、ほぼ全てを使っているという高度な声作りなのです。
メンバーによってはパワフルな声で歌っていますのが、イントロでほぼウィスパーオンリーに近い形のコーラスパートがあります。そのイントロからして画期的だったのです。
サザン・ソウルとは思えない洗練されたポップな楽曲と歌唱法です。
エモーションズは、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスを使っています。
女性ソウルシンガーのウィスパーのパイオニアがサザン・ソウルのアーティストだったという事は、意外な事と思われる方も多いでしょう。
エモーションズはイリノイ州シカゴのR&Bグループです。
音源は1969年の曲です。
エモーションズ
それでは一般的に女性ソウルシンガーのウィスパーのパイオニアとして知られているダイアナ・ロスですが、それは一概には間違ってはいなく事実なのです。
ダイアナ・ロスがスプリームスのメンバーとしてデビューしたのは1960年でした。
スプリームスは北部のミシガン州デトロイトのモータウンの看板グループでしたが、最初はいまいち売れませんした。しかしこの曲でスプリームスは初めてビルボードで1位を記録しました。
有名な曲ですので、知っている方も多いでしょう。
ダイアナ・ロスらしく、可愛らしい声ですが、ウィスパー特有のハスキーな声ではなく、クリアな透き通った声です。この声も良いですが、ダイアナ・ロスは当初はウィスパーを使っていなかったのです。
ちなみにこの曲では前述の様に、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを使っています。そしてマウスレゾナンスを使う時は、若干、パワフルな声のネイゾルのクライングと組み合わせますで、パワーがある声になっています。
ダイアナ・ロスは可愛らしい歌声で、いわゆるパワフルな声ではありませんが、クライングはサックス様なクリアな声も出せますので、そっちの方を使っています。
スプリームスは北部のミシガン州デトロイト出身のR&Bグループです。
音源は1964年の大ヒット曲です。
スプリームス
しかしその2年後には、ダイアナ・ロスは、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスを使っています。
ウィスパーは囁くという意味ですので、この曲での歌声はハスキーですが、いわゆる囁く声ではなく、若干パワフルな歌声です。それはウィスパーに、パワフルな声のネイゾルのクライングと組み合わせているからです。
それではダニー・ハサウェイと一緒では?と思う人もいるかもしれません。しかし、聞いて分かるように、歌声は全然似ていません。
その理由はダイアナ・ロスと明るいトーンのクライングをウィスパーと組み合わせているからです。ダニー・ハサウェイの声の分析で、あえてトーンについて触れなかったのは、明る過ぎるトーンでもなく、暗過ぎるトーンでもなく、中間のトーンだからです。あとはダニ・ハサウェイのクライングは文字通り、泣き声に若干近い声です。これからダイアナ・ロスの声の分析をしますので、それを読めば、何が違うのかが解ると思います。
ダイアナ・ロスは、この曲でウィスパー主体と言いいましても、そこまでハスキーではありませんので、クライングの方が強いです。前述の様にクライングは、かなり明るいトーンです。
そして前述の様に、ダイアナ・ロスは可愛らしい歌声で、いわゆるパワフルな声ではありませんが、クライングはサックスの様なクリアな声も出せますので、そっちの方を使っています。
よってダニー・ハサウェイとは声が似ていないのです。
この曲では1コーラス目と4コーラス目のヴァースがウィスパー主体です。
この曲は変則的で、Aメロ、サビ、Bメロ、サビ、Bメロ、サビ、Aメロ、Cメロ、サビという構成で、Aメロがウィスパー主体です。
そしてサビとBメロ、Cメロは、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを使っています。前述の様に、マウスレゾナンスを使う時は、若干、パワフルな声のネイゾルのクライングと組み合わせますので、パワーがある歌声になっています。
この曲は1966年の曲ですので、エモーションズの曲よりも先だった訳です。よってダイアナ・ロスが女性ソウルシンガーのウィスパーもパイオニアだと言えます。
結論を言うと、確かにダイアナ・ロスが女性ソウルシンガーのウィスパーボイスのパイオニアです。しかし現代のR&Bにおけるウィスパーの使い方のルーツは、エモーションズのウィスパーの使い方にあると言えます。
ダイアナ・ロスがウィスパーを使う様になりヒットしたのが、この曲です。この曲もビルボードで1位を記録しました。
この曲も有名な曲ですので、知っている方も多いでしょう。
音源は1966年の大ヒット曲です。
ウィスパーで歌う様になったダイアナ・ロス
そして、ダイアナ・ロスは1969年にスプリームスを脱退して、その翌年の1970年にソロデビューをしました。
ソロシンガーになってから、より本格的にウィスパーを使う事が多くなりました。
その例として、この1980年代の名曲を紹介します。
もちろんこの曲では、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスを使っています。
そして、ウィスパーに、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンス、そして更には、パワフルな声のネイゾルのクライングを組み合わせるという高度な声作りをしています。いわゆるパワフルな声ではありませんが、クライングはサックスやフルートの様なクリアな声も出せますので、そっちの方を使っています。フルートの様な声のクライングです。
この頃のダイアナ・ロスは、若い頃の様に可愛らしというよりも、大人な感じで、落ちついた美しい歌声です。
スプリームの頃よりも、より囁く様な声で、これぞウィスパーボイスと言える歌声です。
ダイアナ・ロスは北部のミシガン州デトロイト産まれです。
音源は1988年の曲です。
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