ヒップホップ世代のR&Bシンガー達のウィスパーボイス
真っ先に名を挙げられるのは、ブライアン・マックナイトですが、既に動画を貼っていますので、女性R&Bシンガーから。
まずヒップホップ世代というのは、主に1992年にヒップホップ・ソウルが誕生し、それ以降にデビューしたシンガーの事を指しますが、それ以前にデビューしていても、ヒップホップの要素が入った曲を歌っていたシンガーはヒップホップ世代ですので、例外的なシンガーもいます。
1990年代でウィスパーを使う代表的な女性R&Bシンガーには、ブランディとモニカが挙げられます。
しかし実は言うと、1990年代にウィスパーを得意としてたヒップホップ世代の女性R&Bシンガーは沢山いたのです。ただその頃はボーカルグループブームでソロシンガーは滅多にいなかったのです。
ソロシンガーの方が解り易いですので、ここではソロシンガーを挙げます。
ブランディにするか、モニカにするか悩んだのですが、改めて声を聞き比べるてみたら、ブランディの方がウィスパーを使っているのが分かり易いという理由で、ブランディを選びました。
ブランディは、この曲で主にAメロとハモリパートで、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスを使っています。Bメロと2コーラス目以降のサビのアドリブ、大サビでは、パワフルな声のネイゾルのクライングを使っています。しっとりした曲ですので、そこまでパワフルに歌っている訳ではありませんが、AメロとBメロの強弱が分かると思います。
サビのハモりパートは、ほぼウィスパーオンリーですが、Aメロはウィスパーにクライングを組み合わせています。
ブランディは南部のミシシッピ州産まれで、カリフォルニア州育ちです。
動画は1998年の大ヒット曲です。
ブランディ
そして次は1990年代にボーイズIIメンやJodeciに並び人気のあった、R&Bグループのドゥルー・ヒルのシスコです。
最近はR&Bグループと呼びますが、当時はボーカルグループと呼ばれていました。
シスコは、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスと、パワフルな声のネイゾルのクライングを組み合わせています。
この発声法の組み合わせの歌唱法はニュー・ソウルを作った、ダニー・ハサウェイが作ったのですが、見事な程にハスキーでありながらもパワフルな歌唱です。
シスコはハスキーな声でソウルフルに、そしてパワフルな歌声のシンガーとして一世を風靡しました。
シスコは北部のメリーランド州ボルチモア産まれです。
メリーランド州は北部ですが、歴史的に定義が複雑な州です。
動画は2000年の大ヒット曲です。
シスコ
そして21世紀に入ります。
この3LWは2000年にデビューして、ギリギリ20世紀にデビューしていたのですが、やはりこの時期にはソロシンガーがあまりいませんでしたので、最後はR&Bグループの曲です。
3LWというグループ名は、3 Lil Womenの略で、つまり「3人の小さな女達」という意味で、元々3人組の女性R&Bグループでした。
しかしメンバーが1人脱退してしまい、この曲では2人になっています。
ここで注目して欲しいのは、黒人の女性シンガーのキーリーの発声法です。
ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスと、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを組み合わせています。
ダイアナ・ロスもスプリームス時代はウィスパーとマウスレゾナンスを使っていましたが、組み合わせているというよりは使い分けているという感じでした。ダイアナ・ロスはソロになってからは、ウィスパーとクライング、マウスレゾナンスを組み合わせています。
よってウィスパーとマウスレゾナンスだけの組み合わせの、キーリーの歌声は衝撃的な程に画期的だったのです。
PVでは2人とも悪そうに見えますが、この曲をリリースした翌年に2人ともディズニー・チャンネルのスターになり、子供達の人気者になりました。
それは意外でした。
3LWは北部のニュージャージー州出身のR&Bグループです。
動画の曲は2002年の曲です。
3LW
2010年代に男性R&Bシンガーでウィスパーが印象的だったのは、このブルーノ・マーズです。
もちろんブルーノ・マーズは現在も現役バリバリです。
ブルーノ・マーズはテクニシャンですので、色々な発声法を用いて、色々な声を出せるのですが、このデビュー曲での発声法は、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスと、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを組み合わせています。
声が明るいのは、明るいトーンのマウスレゾナンスを使っているからです。
もちろんブルーノ・マーズの歌声は、聴いて解る様に、芯のある歌声ですので、パワフルな声のネイゾルのクライングを主体に、ウィスパーとマウスレゾナンスを組み合わせています。
この曲でのブルーノ・マーズの歌声は、サビはそれなりにパワフルな歌声ですが、全体的にはいわゆるパワフルな歌声ではありません。クライングはサックス様なクリアな声も出せますので、そっちの方を使っています。
ブルーノ・マーズの歌声はハスキーですが、サックスの様に芯のある声だという事が特徴に挙げらあれます。
ブルーノ・マーズはハワイ州ホノルル産まれです。
動画の曲は2010年のデビュー曲にして大ヒット曲です。
ブルーノ・マーズ
一方で、2010年代に女性R&Bシンガーでウィスパーが印象的だったのは、このティナーシェです。
ティナーシェは、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスを主体にしたシンガーです。
ウィスパーボイスを使うシンガーは、女性シンガーの場合は通称アイドル歌唱と呼ばれますので、アメリカのR&Bでも比較的アイドル寄りのシンガーが使います。もちろん本格派の女性R&Bシンガーもウィスパーボイスを使いますので、絶対にそうだという訳ではありません。
男性シンガーの場合はウィスパーボイスを使っても、アイドル歌唱ではありません。むしろ男性R&Bシンガーの場合は、このブログ記事で取り上げているシンガーで例を挙げれば、シスコの様にソウルフルな実力派シンガーがウィスパーボイスを好んで使います。
ティナーシェはカリフォルニア州産まれです。
動画の曲は2014年のデビュー曲です。
ティナーシェ
最近のR&Bでウィスパーを得意としているシンガーには、ドージャ・キャットの他にも、このサマー・ウォーカーも例に挙げられます。
サマー・ウォーカーは基本は、パワフルな声のネイゾルのクライング主体のシンガーですが、クライングに、ハスキーな声のウィスパーボイスを組み合わせています。
しかしサマー・ウォーカーの歌声はパワフルではありません。
泣き声自体はこもった声ですので、そのこもった声を使っています。
サマー・ウォーカーはトラップを取り入れた、女性のトラップ・ソウルを代表するシンガーです。
現在のR&Bはブライソン・ティラーが作ったトラップ・ソウルか、フランク・オーシャン、ザ・ウィークエンドなどが作ったオルタナティブR&Bが主流です。
この曲は、そのトラップ・ソウルを作ったブライソン・ティラーが客演している貴重な曲です。
サマー・ウォーカーは南部のジョージア州アトランタ産まれです。
動画の曲は2019年の曲です。
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