ソウルの2大女王によるクライング
さて、ソウルの女王と言えば、サザン・ソウルのアレサ・フランクリンです。
しかし人によってはモータウンのグラディス・ナイトだと意見が別れます。
まずはサザン・ソウルのソウルの女王、アレサ・フランクリンからです。
アレサ・フランクリンは、スタックス/ヴォルトの発売元のアトランティック・レコードのシンガーで、アトランティック・ソウルと呼ばれています。もちろんスタックス/ヴォルトのオーティス・レディングなどもアトランティック・ソウルと呼ばれています。
スタックスは南部のテネシー州メンフィスのレーベルですが、アレサ・フランクリンはテネシー州の南隣りで、同じく南部のアラバマ州のフェイム・スタジオでレコーディングをしました。しかし大まかにはメンフィス・ソウルで、メンフィス・ソウルのシンガーとして知られています。
しかし、それ以前、それ以降も、色々なレコード会社を転々としていますので、全盛期はアトランティックだったという事です。確かにアトランティックに移籍してから曲がヒットする様になったのは事実ですが、アトランティックを去ってからも多くの曲がヒットしています。
アレサ・フランクリンは、パワフルな声のネイゾルのクライングと、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを組み合わせています。
一聴すると明るめの声ですが、それはブルージーでありながらもパンチの効いた、明るめのトーンのマウスレゾナンスを使っているからです。クライングはやや暗めのトーンです。よってこの様なソウルフルでありながらにブルージーな歌声なのです。
この曲はブルージーでいかにもサザン・ソウルという感じの曲で、圧倒的な歌唱力と表現力です。むしろ表現力が圧倒的だと言えるでしょう。なぜならアレサ・フランクリンの歌唱力はここでは止まらなかったからです。
アレサ・フランクリンは南部のテネシー州メンフィス産まれですが、北部のミシガン州デトロイト育ちです。
面白いところは、サザン・ソウルのソウルの女王として知られるアレサ・フランクリンは、産まれは南部のメンフィスでも、モータウンの発祥地である北部のデトロイトで育ったというところです。
音源は1967年の曲です。
アレサ・フランクリン
そしてアレサ・フランクリンは全盛期の1960年代と1970年代も圧倒的な歌唱力でしたが、それでは収まらずに歌唱力を上げました。それがこの曲です。
女性の場合は歳を重ねるにつれて、暗いトーンの声になる傾向がありますが、アレサ・フランクリンの声のトーンが暗く太くなったのが歳のせいなのかは解りませんが、段違いにレベルアップしたという事だけは、歌を聴いて解ります。
この曲でのアレサ・フランクリンは、パワフルな声のネイゾルのクライング主体ですが、前半では、ハスキーな声のネイゾルのウィスパーボイスを組み合わせています。そしてもちろん、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスとも組み合わせています。クライングのトーンは若い時に比べると暗めで、マウスレゾナンスも深みを増して暗めのトーンです。
後半では、がなり声のネイゾルのシャウトも使っていて、これぞソウルの女王の本領発揮という圧倒的な歌唱力です。見事なゴスペル的な歌唱です。アレサ・フランクリンはデビュー当時や全盛期にもゴスペルを歌っていたのですが、こういう歌い方は若い頃にはしていませんでした。
この1曲だけで、黒人特有の発声法の、ほぼ全てを使っています。
声も歌い方もディープという一言に尽きます。
音源は1985年にアレサ・フランクリンが、ロバータ・フラックの1971年の曲をカバーしたカバーバージョンです。
圧倒的な歌唱力のアレサ・フランクリン
そしてもう一人はアレサに並び、ソウルの女王と称される、ノーザン・ソウルのソウルの女王、グラディス・ナイトです。
北部のミシガン州デトロイトが本拠地だった、モータウンで活躍していましたので、ノーザン・ソウルのソウルの女王なのですが、産まれは南部です。
しかし、グラディス・ナイトも、それ以前、それ以降も、色々なレコード会社を転々としていますので、数年間モータウンにいたという事に過ぎません。グラディスの場合はむしろ、モータウンを離れてからの方が成功しました。もちろんモータウンでも沢山の曲がヒットしました。
グラディス・ナイトは、パワフルな声のネイゾルのクライングを使っていますが、パワフルに押しまくる歌い方ではありません。そして少しこもった声です。クライングはサックスやフルートの様なクリアな声も出せるのですが、これはネイゾルだけには限らず、泣き声自体は元々こもっています。
グラディス・ナイトは、そのこもったままのネイゾルのクライングを、いかにも泣いている感じではなく、時に繊細に、時にパワフルに、洗練された感じで使い、ソウルフルでありながらも、落ち着いた温かみのある歌声です。クライングのトーンは、やや暗めですが、暗過ぎずにマイルドなトーンです。
そしてアレサ・フランクリンの様に圧倒的な歌唱力を披露するのではなく、歌詞の表現力が圧倒的なシンガーです。
グラディス・ナイトは南部のジョージア州アトランタ産まれです。
アレサ・フランクリンと同様に面白いところは、ノーザン・ソウルのソウルの女王のグラディス・ナイトは、産まれは南部のジョージアで、北部のデトロイトが本拠地だったモータウンで活躍していたというところです。
またグラディス・ナイトはソウルの女帝としても知られています。
音源は1972年の曲です。
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