官能的なマウスレゾナンス
では、1970年代に流行った官能的なマウスレゾナンスの歌唱法の紹介です。
この歌唱法のルーツは、ダニー・ハサウェイと同様にニュー・ソウルを作ったカーティス・メイフィールドにあるのですが、このマーヴィン・ゲイに関しては例外です。
マーヴィン・ゲイは、1960年代に既にマウスレゾナンス主体での歌唱法を確立していました。
しかし、1970年代に入ると、ニュー・ソウルの影響を受けて、楽曲もサウンドも独自のスタイルに完成されました。
それまでのモータウンサウンドのマーヴィン・ゲイではないのです。
そして、新たな歌唱法も確立しました。
もちろん前出の"What's Going On"の時期から新たなサウンドと歌唱法を確立していましたが、この曲で、マーヴィン・ゲイの歌唱法が完成されたと言っても良いです。
この歌唱を聴いて、なぜマーヴィン・ゲイの発声法や歌唱法が上級編なのかが解るでしょう。
部分的に、がなり声のネイゾルのシャウトも使っていますが、基本は、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスです。そして、パワフルな声のネイゾルのクライングとマウスレゾナンスを巧みに、組み合わせたり、使い分けたりして、使いこなしています。クライングも使っていると言っても、いわゆるパワフルな声ではありません。しかしクライングはサックスの様なクリアな声も出せますので、そっちの方を使っています。
そして、高い声でのシャウトは、これはマーヴィン・ゲイだけに限った事ではないのですが、ファルセット寄りのシンガーの特徴として、マウスレゾナンスのシャウトも使っています。
この曲でのマーヴィン・ゲイの歌唱は、この上なくソウルフルで官能的です。
官能的な歌い方だと感じるのは、主にマウスレゾナンスとシャウトを組み合わせて歌っている部分です。
マウスレゾナンスとシャウトという組み合わせは、ベン・E・キングも得意としていたのですが、マーヴィン・ゲイの場合は官能的だという事です。
マーヴィン・ゲイはワシントンD.C.産まれです。
音源は1973年の大ヒット曲です。
マーヴィン・ゲイ
カーティス・メイフィールドの影響をまともに受けたと考えられるのは、1957年にドゥーワップ色が強いグループとしてデビューしていた、アイズレー・ブラザーズでした。
デビュー当時から、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンス主体ではあっても、リトル・リチャードの影響が感じられる、がなり声のネイゾルのシャウトも使い、主にロックンロールを歌っていた時期が長く続きました。
1960年代中盤から終盤にかけて数年間、モータウンに在籍し、その頃からソウル色を強めていきました。
モータウンを離れてからはファンク色が強くなりました。
1972年からは、カーティス・メイフィールド的な歌い方になりました。
そして翌年の1973年に、アイズレー・ブラザーズ特有の、スウィートで官能的なマウスレゾナンスが完成しました。
歌い方もスウィートで官能的です。
この曲も、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンス主体で歌っています。
しかしながら、カーティス・メイフィールドのマウスレゾナンスが、アメリカ独自のマウスレゾナンスだというのと同様に、アイズレー・ブラザーズの場合もリードシンガーのロナルド・アイズレー独自のアメリカで生まれたマウスレゾナンスです。
マウスレゾナンスオンリーに近い歌声ですが、ファルセットに聞こえるのは、地声と裏声をミックスしたミックスボイスが、かなりファルセット寄りだからです。
ロナルド・アイズレーも、ファルセット寄りのシンガーの特徴として、マウスレゾナンスのシャウトを使っています。
ロナルド・アイズレーは、デビュー当時はネイゾルのシャウトを使っていましたが、マウスレゾナンスのシャウトを使い始めたのは、1960年代の途中からです。
アイズレー・ブラザーズは北部のオハイオ州シンシナティ出身のR&Bグループ/バンドです。
音源はアイズレー・ブラザーズがの人気曲が1973年に、ソフト・ロック・デュオのシールズ&クロフツの1972年の曲をカバーしたカバーバージョンです。
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