ヒップホップ世代のR&Bシンガー達のマウスレゾナンス

 さて、まずはTLCからです。

 TLCのリードシンガーのT-ボズの歌い方は、当時はラップなのか、歌なのか、分からない歌い方でした。当時、思った事は歌い方がソウルではないという事でした。

 今ではフランク・オーシャンなどの様な本当にラップに近い歌い方と比べれば、T-ボスの歌い方は歌だと言えます。しかし、当時は奇抜な程にラップに近い歌い方に聞こえたのです。まさにヒップホップ世代の歌い方だと言えます。

 歌い方もそうなのですが、声も奇抜です。

 マウスレゾナンスにはクリアな声と、おじさんやおばさんの様なダミ声の2種類があります。T-ボズはおばさんの様なダミ声で歌っています。

 そして、ネイゾルとも組み合わせています。ネイゾルは、シャウトと同じ原理の発声法のトランペットを使っています。

 トランペットは主にジャズで使われる発声法なのですが、ジャズ歌唱という訳ではなく、ヒップホップ歌唱という感じです。

 R&Bにおけるトランペットは、エリカ・バドゥを筆頭に、主にジャズ歌唱をR&Bに取り入れた女性のネオ・ソウル、そしてそのネオ・ソウルから進化したオルタナティブR&Bでは男女共に受け継がれています。

 但し、オルタナティブR&Bの場合は、トランペットを使っていてもジャズ歌唱という訳ではありません。

 しかし前述の様にトランペットはむしろラッパーに受け継がれましたので、そう考えるとT-ボズはラッパーの発声法で歌っているという事が解ります。

 いま聞いても奇抜な声と歌い方ですが、当時は尚更に奇抜に思えたのです。全く新しく奇抜だったからこそ売れたのでしょうが、楽曲はいま聴いても新鮮ですし、そしてカッコいい歌唱法です。

 TLCは南部のジョージア州アトランタ出身のR&Bグループです。

 動画は1994年の大ヒット曲です。


TLC

 そして、ここからは21世紀です。

 1997年にデスティニーズ・チャイルドのメンバーとしてデビューしていたビヨンセですが、2002年にソロデビューしました。

 ビヨンセは、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスが主体なのですが、強烈な程に力強いマウスレゾナンスです。高音はパンチの効いた、若干、カン高いトーンのマウスレゾナンスですが、そのカン高いトーンの高音がビヨンセの武器です。しかし全体的には、いわゆるカン高い声の明るいトーンではありません。明るいトーンでもなく、暗いトーンでもなく、中間のトーンです。

 では、何故ビヨンセのマウスレゾナンスにはパワーがあるのでしょうか?

 その理由は、アメリカ寄りのマウスレゾナンスか、ルーツのアフリカ寄りのマウスレゾナンスかと言えば、若干、アフリカ寄りのカラッとしたマウスレゾナンスですので、こういうパンチの効いた声になるのです。前出のチャカ・カーンも同様ですが、チャカ・カーンの場合はもっとアフリカ寄りです。

 ビヨンセはこの曲では、その強烈なマウスレゾナンスに、パワフルな声のネイゾルのクライングと組み合わせていますが、曲によって異なる声作りをして、あらゆる種類のネイゾルをマウスレゾナンスに組み合わせるというテクニシャンです。

 ビヨンセはテキサス州ヒューストン産まれです。

 曲は2003年の大ヒット曲です。


ビヨンセ

 2000年代に衝撃的な歌声だったのが、このクリス・ブラウンです。

 声変わりしていない様な声で、ヤンチャな感じでありながらも可愛いというイメージで、たちまちブレイクしました。

 この声は若い男性にしか出せない声だと思われる人も多いかもしれませんが、クリス・ブラウンは、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを、ちょっと特殊な形で使い歌っています。

 それは、マウスレゾナンスオンリーという歌声です。

 マウスレゾナンス主体のシンガーは大体はクライングと組み合わせます。

 もちろんサム・クックとオーティス・レディングのマウスレゾナンスオンリーの曲も紹介しましたが、この二人のディープな歌声の場合は、ダミ声ではありませんが、マウスレゾナンスにはクリアな声と、おじさんやおばさんの様なダミ声の2種類がありますので、サム・クックの場合はおばさんの様な声、オーティス・レディングの場合はおじさんの様な声のマウスレゾナンスを使っています。

 またニュー・ソウルのカーティス・メイフィールド、そして官能的なマウスレゾナンスのアイズレー・ブラザーズは、クリアな声のマウスレゾナンスとファルセット寄りのミックスボイスを組み合わせています。

 ディアンジェロをはじめとしたネオ・ソウルのシンガー達もカーティス・メイフィールドとほぼ同様です。

 クリス・ブラウンの何が新しかったかと言えば、かなり明るいトーンのマウスレゾナンスを使い、少年の様な歌声だというところです。そして完全にマウスレゾナンスオンリーなところです。

 クリス・ブラウンがデビューしたのは16歳で、この曲はデビューアルバムに収録されている曲ですので、実際に少年だった訳ですが、声変わりする前の少年の様な声です。

 ありそうでなかった歌声です。

 クリス・ブラウンは南部のバージニア州産まれです。

 動画は2005年の曲です。


クリス・ブラウン

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