ブルースのクライングのパイオニア達
さてR&Bをはじめ、ジャズ、ゴスペル、ロックのルーツであるブルースですが、ブルースにおける、パワフルな声のネイゾルのクライングのパイオニア達を紹介します。
まずはブルースの王様、B.B.キングです。
見事なクライングでのパワフルな歌声と歌唱ですが、B.B.キングはゴスペルで喉を鍛え、ブルースにゴスペル歌唱を取り入れた事で知られています。
ブルースにゴスペル歌唱のクライングを取り入れたという意味では、B.B.キングはブルースのクライングのパイオニアです。
ちょっと疑問に思いますよね。ブルースはゴスペルのルーツなのに、ブルースマンがゴスペルの影響を受けているという部分です。
ゴスペルが北部のイリノイ州シカゴで誕生したのは1930年代です。
B.B.キングはモダンブルースという、ブルースにしては新しいブルースを演るブルースマンで、1949年にデビューしましたので、既にゴスペルがあったのです。
B.B.キングは歳を重ねるにつれパワフルな歌唱になり、デビュー当時はここまでパワフルな声ではありませんでした。
B.B.キングの発声法の特徴は、そのパワフルな声のネイゾルのクライングに、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスと組み合わせるというところです。これはアレサ・フランクリンを筆頭に、主に女性ソウルシンガーの伝統的な発声法の組み合わせなのですが、1950年代にソウルミュージックが誕生する前は、黒人が得てしてよく使う発声法の組み合わせであり、流行りの発声法の組み合わせでもありました。
男性でも、元祖ソウルマンのサム・クックはクライングとマウスレゾナンスの組み合わせを得意とするシンガーです。
B.B.キングのB.B.はビール・ストリート・ブルース・ボーイの略です。
ビール・ストリートはメンフィスのダウンタウンにある、ブルースのライブハウスが立ち並ぶ、ブルースの本場のストリートです。
B.B.キングはメンフィスのあるテネシー州の南隣りの南部のミシシッピ州産まれですが、南部のテネシー州メンフィスを代表するブルースマンです。
動画は1969年にB.B.キングが、ロイ・ホーキンスの1951年の曲を、斬新なアレンジでカバーしたバージョンのライブ動画です。カバー曲とは言え、B.B.キングの代表曲を1曲と言われたら、誰もがこの曲だと答える程に、B.B.キングの代表曲として有名です。
B.B.キング
そして次は日本ではブルースの女王、アメリカではブルースの女帝として知られているベッシー・スミスです。
ベッシー・スミスがデビューしたのは、なんと1923年です。そして音源はそのデビュー曲です。
一般的にブルースを初めてレコーディングしたブルースマンは、ブラインド・レモン・ジェファーソンだと言われています。それは1925年の事でした。
しかし聴いて分かる様に、ベッシー・スミスのサウンドはいわゆるブルースマンが演るブルースではなく、ジャズマンが演るブルースに近いです。よってベッシー・スミスはジャズのブルースとして認識されているからでしょう。
そして肝心なベッシー・スミスの発声法ですが、パワフルな声のネイゾルのクライングを使っていて、文字通り泣き声に近い歌声です。泣き声自体はネイゾルに限らず、元々こもっています。
その泣き声のこもったネイゾルのクライングを使っている為に、少々こもっている歌声に聞こえますが、決してこもっただけの歌声ではありません。そこは当時流行りだった、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスと組み合わせている事でトーンは暗くはありません。
クライングとマウスレゾナンスの組み合わせは、ソウルミュージックでアレサ・フランクリンやサム・クックが、その組み合わせをする、ずっと昔から、ジャズやブルースではあったという事です。
もっとルーツを辿れば、クライングとマウスレゾナンスの組み合わせは、奴隷時代の黒人霊歌の時代からあった発声法の組み合わせです。
そして、そのブルースにおいて、その組み合わせ方のパイオニアはベッシー・スミスです。
そしてブルースのクライングのパイオニアもベッシー・スミスです。
ベッシー・スミスは南部のテネシー州産まれです。
音源は1923年のデビュー曲にして大ヒット曲です。
ベッシー・スミス
ブルースにおけるクライングは、B.B.キングを聴けば十分です。
しかし、シカゴ・ブルースにB.B.キングに匹敵するクライングの達人の名シンガーがいます。
それがこのオーティス・ラッシュです。
オーティス・ラッシュもB.B.キング、ベッシー・スミスと同様に、パワフルな声のネイゾルのクライングと、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを組み合わせていますが、強烈なクライングです。
オーティス・ラッシュはブルースが誕生した南部のミシシッピ州産まれですが、シカゴ・ブルースを代表するブルースマン、マディ・ウォーターズ同様にミシシッピ出身で、北部のイリノイ州シカゴで、シカゴ・ブルースのブルースマンとして活躍しました。
動画は1956年のデビュー曲です。
オーティス・ラッシュ
そして、オーティス・ラッシュの歌唱力を語る上で欠かせない曲が、リズム&ブルースの要素を取り入れた、この曲です。
ソウルミュージックは北部のイリノイ州シカゴで1957年に誕生しましたが、この曲は1956年の曲です。
元祖ソウルマンは、このオーティス・ラッシュかもしれません。
音源は1956年の曲です。
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