ゴスペルのクライングのパイオニア達
まずはゴスペルの女王、マヘリア・ジャクソンでしょう。
この曲はゴスペル作った、トーマス・A・ドーシーの曲のカバーなのですが、あまりに有名な曲で、アレサ・フランクリンもレパートリーにしてカバーしています。
マヘリア・ジャクソンは、パワフルな声のネイゾルのクライングを主に使っています。
マヘリア・ジャクソンがデビューしたのは1931年なのですが、この曲は1956年にカバーして、マヘリア・ジャクソンの代表曲の一曲となりました。
ゴスペルの曲はYouTubeで音源の資料が少ない為に、1931年の曲は出てこなかったのですが、1937年の曲は出てきました。若い頃はクライングと、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンスを組み合わせていて、もっと当時の流行りの歌い方でブルージーでしたが、マヘリア・ジャクソンはゴスペルのクライングのパイオニアです。
この曲でも少しは部分的にマウスレゾナンスを使っていますが、いわゆるブルージーな流行りの歌い方ではなく、これこそがゴスペルという歌い方です。
マヘリア・ジャクソンは暗いトーンの深く落ち着いたクライングを得意としていました。
ビブラートも深いです。
マヘリア・ジャクソンは南部のルイジアナ州ニューオリンズ産まれですが、ゴスペルの生誕地のイリノイ州シカゴに移住しました。
音源は1956年にマヘリア・ジャクソンが、トーマス・A・ドーシー作曲のセラー・ジュビリー・シンガーズの1938年の曲をカバーしたバージョンです。
マヘリア・ジャクソン
次に紹介するのは、シスター・ロゼッタ・サープです。
日本ではあまり知られていませんが、シスター・ロゼッタ・サープはアメリカでは有名なシンガーです。
シスター・ロゼッタ・サープは1941年にデビューしました。
シスター・ロゼッタ・サープはゴスペルシンガーとしても知られていますが、ブルースシンガーとしても活躍していました。
アメリカでは、宗教音楽であるゴスペルと、世俗音楽のブルースやR&Bを同時に歌うという事はタブーなのです。今でもR&Bシンガーがゴスペルを歌う事はあっても、ゴスペルシンガーがR&Bを歌うという事はタブーなのです。
当時、ブルースは今で言うR&Bの様に流行りの音楽でした。そしてマウスレゾナンスが流行っていました。
この曲はゴスペルですが、シスター・ロゼッタ・サープはブルースを歌う時は、元はアフリカの発声法のマウスレゾナンス、ゴスペルを歌う時は、パワフルな声のネイゾルのクライングと使い分けていました。しかしやはりシスター・ロゼッタ・サープが歌うとブルージーなマウスレゾナンスとクライングの組み合わせという感じで、流行りの歌い方に聴こえますが、むしろそれが良かった訳です。ポップでパンチの効いた曲と歌い方です。
またシスター・ロゼッタ・サープはギターの名手でもありました。
聖職者の様なマヘリア・ジャクソンと、正反対に世俗的なシスター・ロゼッタ・サープですが、どちらも歴史に名が残る偉大なゴスペルシンガーです。
よってシスター・ロゼッタ・サープもクライングのパイオニアと呼べます。
シスター・ロゼッタ・サープはやや暗いトーンのパワフルなクライングを得意としていました。 若い頃はもっと明るいトーンのクライングでした。
シスター・ロゼッタ・サープは南部のアーカンソー州産まれですが、ゴスペルの生誕地のイリノイ州シカゴに移住しました。
音源は1962年の曲です。
シスター・ロゼッタ・サープ
尚、女性のゴスペルシンガーだけの紹介となりましたが、男性のゴスペルシンガーは、この頃はシャウト主体のシンガーが多かったからです。クライングを使う男性ゴスペルシンガーはコンテンポラリー・ゴスペルが誕生した時期辺りから出てくる様になりました。大体1970年代くらいからクライングを使う男性ゴスペルシンガーが徐々に現れ、そして1980年代には男性ゴスペルシンガーがクライングを使う事が主流になり、現在に至っています。
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